【太陽時】(作成:2019/4/22訂正)

・太陽の動きは一定ではない
太陽の天空上の動きは一定ではありません(すなわち、地球の動きが一定でない)。
一定でない大きな要因は
・地球の軌道が楕円である
・自転軸が傾いている
ネットを検索すると解りやすい説明が多々ありますので、ここでは小さな要因を。

・歳差と章動
上の大きな要因に「自転軸の傾き」がありますが、その軸の傾きが日々変化しています。
歳差と呼ばれる大きな変化と、章動と呼ばれる小さな変化です。
歳差は約25800年周期で、章動は最大が約18.6年周期の小さな振動です。
地軸の位置が変化すると、黄道面と赤道面の交点位置や角度が変わります。

・極運動
歳差と章動は自転軸ですが、極運動は自転軸と地理的極のズレ分です。
周期約6年で半径約10mの円で自転軸と地理的極がズレます。
これにより、天空の星は約0.3"角ズレます。

・潮汐力
月は、色々な方面で地球に影響を与えています。
先に述べた歳差や章動も月の影響がありますが、潮汐力もその一つです。
潮汐力により、地球の自転エネルギーが月に吸収され地球の自転が遅くなります。
その量は1年で約0.000017秒(17μsec)と僅かずつですが蓄積されています。
潮汐力は、月以外にも太陽や他の惑星からも受けます。

近地点移動
地球の軌道も、月・太陽・他惑星の重力(摂動という)で日々変化しています。
軌道が変わると、近日点位置も時間(近日点通過日)も変わります。
これを近点移動と呼び、地球の場合は近地点移動と呼びます。
変化量は一年で約11.45"角ずつ移動しています。

こうやって小さな要因を拾い上げると切りが無いですねぇ。


・視太陽時(Apparent Solar Time)と真太陽時(True Solar Time)
視太陽時もしくは真太陽時とは

【実際に見えている太陽の動きに合わせた時刻】

実際に見えている太陽が基準ですから、
上に書いた日々変化する要因をすべて含んだ物です。よって、

視太陽時とは1日の長さが日々違う

という特徴を持ちます。
昨日の24時間と今日の24時間は長さが違うわけです。

さて、視太陽時と真太陽時は同義語として扱っているが、

真太陽時とは視太陽時から光行差による影響を除いたもので
視太陽時より1.36秒遅れる


と書いてあるサイトを発見した。
1.36秒の値から年周光行差(Annual Aberration)と思われます。
本サイトではこれに習って

視太陽は年周光行差を含む。
真太陽は年周光行差を含まない。


と分ける事にしました。


・平均太陽時(Mean Solar Time)
日々変動する視太陽時の代わりに作られたのが平均太陽時で、

視太陽時を平均化し一定の歩度で時が進むように作られた
自然界に存在しない時刻系です。


平均太陽時は平均太陽(仮想地球)という天体を想定しており、
その式は



Newcomb(1898)によって与えられたもので、が平均太陽の赤経です。
※多分、この式は古いので今は使われないと思いますが・・・

この平均太陽から平均太陽時を求めるのは

・・・・【式1】

これを言葉で表すと
グリニッジ平均恒星時と平均太陽の時角に12時を加えた物
これが平均太陽時の定義です。


・平均太陽時と世界時
世界時の定義式を書きます。

 ・・・・【式2】

【式2】は【式1】と同じです。つまり、

グリニッジ上の平均太陽時が世界時

この事から、世界時は
グリニッジ平均時(GMT:Greenwich Mean Time)とも呼ばれます。

世界時には、UT1の他にUT0も存在します(UT2も存在するが使わない)。



は観測地の経度で、UT0は地方で観測された平均太陽時です。
これらを図にしてみました。



今でも各地で恒星時の観測を行い、UT1が随時更新されています。
UT1の情報はIERS Earth orientation dataで見ることができます。


・平均太陽時と視太陽時
視太陽時は、自然を表すには最適な時刻です。例えば、
冬至は、日の出が一番遅く、日の入りが一番早い日になります。

これが、平均太陽時では
冬至は、日の出が一番遅い日ではなく、日の入りも一番早い日ではない。

平均太陽時は我々の感覚と合いません。

もう一つの例として、
正午に同じ場所で1年間太陽を撮影したとすれば、



視太陽時の正午では、夏至から冬至まで太陽は縦に一直線に並びます。
しかし、平均太陽時の正午では8の字を描いてしまいます。
この8の字の運動をアナレンマ(analemma)と呼びます。
アナレンマの一箇所を拡大します。



平均太陽時の12時の位置は、8の字の中心であり、
視太陽との差を均時差(Equation of Time)と呼ばれます。
式にすれば、

均時差=視太陽時−平均太陽時

ゆえに、均時差が判っていれば

視太陽時=平均太陽時+均時差

平均太陽時から視太陽時を計算できる事になります。


時角に戻る 均時差の計算
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